令和4年度のデータによると、小中学校における不登校児童生徒数は29万9048人であり、前年度から約5万人増加している。また、小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は過去最多の68万1948件となっている。

 不登校と聞くと学校を長期間休むこと、学校を継続的に休むことというイメージを抱きがちですが、文部科学省によると不登校の定義は病気や経済的な理由などといった特別な事情がなく、「年間の欠席日数が30日以上となった状態」のことを指します。

図 不登校児童生徒数の推移

(引用元:令和4年度令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

不登校の定義と意味

 文部科学省による不登校の定義は以下のようになっています。

「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者」

(引用元:不登校の現状に関する認識

 実際に不登校の子の中の多くは体調不良を原因に欠席しているのが現状です。しかし、文部科学省の定義では体調不良を原因に欠席している子はカウントされていません。それらを含めると、実際の不登校の子は40万人以上いると推測されています。

 文部科学省は、不登校の原因を次の3つに分類している。

  • 学校に係る状況
  • 家庭に係る状況
  • 本人に係る状況

図 不登校の要因

(引用元:令和4年度令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

 それぞれの不登校の原因のうち、代表的なものを挙げ、掘り下げていきます。

学校に係る原因

 学校に係る原因として一番多くの割合を占めているのは、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」です。学校は様々な学習の場です。勉強の場はもちろんですが、対人関係を学ぶ場でもあります。学年が上がるとともに様々なコミュニティが増え、関係も複雑になり様々なトラブルが起こりがちです。「スクールカースト」と呼ばれる目に見えないグループ間の序列があり、ときに過酷な環境を経験することもあります。
 そのほかに「中一ギャップ」という現象が不登校に繋がりやすくなります。「中一ギャップ」とは小学校を卒業して中学校へ進学した際、これまでの小学校生活とは異なる新しい環境や生活スタイルになじめず、授業に行けなくなったり、いじめが起こったりする現象のことです。

家庭に係る原因

 家庭に係る原因として一番多くの割合を占めているのは、「親子の関係」です。両親の離婚や再婚といった家庭の出来事が子どもの不登校に影響する場合があります。保護者と子どもの関係が不登校に影響を与えることもあります。保護者が直接の原因でなくても、保護者とのかかわりの中で培われた価値観や性格が友人関係のトラブルを起こしてします場合もあります。

本人に係る原因

 本人に係る原因として一番多くの割合を占めているのは、「無気力、不安」です。これは小中学校における不登校の子どもの不登校になった原因の中で最も多い(51.0%)ものである。学校に行きたくない明確な理由がなく、なんとなく行きたくないという無気力状態の子どもが多いのが特徴です。周囲が見守るのみの対応をしていると、不登校の期間が長くなり、長期の引きこもりとなる恐れがあります。

 ここまで不登校の原因を3つに分類してまとめてみたが、原因はひとつではなく複雑に絡み合っていることがほとんどで、ひとつの原因を特定することはあまり意味がないです。

 不登校が個人レベルや社会全体に与える影響について考える。以下にそのいくつかの主な影響を示します。

個人レベルの影響

 学習の遅れや社会的スキルの不足、自尊心の低下や精神的な問題があげられる。学校から離れることで学習の機会や、人間関係を築く機会が失われます。そのため、将来のキャリアや個人の成長に影響を及ぼす可能性があります。

 また、長期間の不登校は、自尊心の低下や抑うつなどの精神的な問題を引き起こす可能性があります。

社会全体への影響

 不登校は経済的なコストも伴います。個々の教育の機会の欠落は、将来の労働力の能力や生産性に影響を与える可能性があります。また、若者の大規模な教育不参加は、社会的不安定の要因となる可能性があります。さらに、若者の犯罪や非行のリスクを高める可能性もある。


 不登校は個人だけでなく、社会全体にも重大な問題を引き起こす可能性があります。そのため、不登校に対処するためには、個別の支援だけでなく、教育制度や社会全体の取り組みが必要です。

 文部科学省によると、不登校の支援のポイントは以下のように示されている。

『「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること。』

(引用元:「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」|文部科学省

 

 これは不登校は悪いと考えるのではなく、「社会的自立」という目標を達成することが大事であることを示しています。そのため、不登校の子どもへの支援は「社会的自立」を促すものであるべきです。
 国や自治体、学校の不登校支援の代表例として「教育センター(適応指導教室)」が挙げられる。教育支援センターは不登校に関する相談や不登校児童に対するカウンセリングや学習支援を行う教育施設です。

 そのほかに、民間企業やNPO法人でも、不登校の子どもに対する支援が行われています。たとえばNPO法人日本フリースクール協会は、日本ではじめてのフリースクールのネットワークとして、不登校や引きこもりの人に対して学校以外の学習の場所、また居場所となることを目指して活動しています。フリースクールとは、「不登校の子どもに対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設」のことです。

 今回紹介したような、国や自治体が行っている取り組みや、民間企業やNPO法人が行っている取り組みを活用することで、問題の解決が進む可能性があります。

 令和4年度のデータによると、小中学校における不登校児童生徒数は29万9048人であり、過去最多となりました。

 文部科学省による不登校の定義は「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者」となっていますが、この定義では体調不良を原因に欠席している子はカウントされていないため、実際の不登校の子は40万人以上いると推測されています。

 文部科学省によると、不登校の支援のポイントは不登校は悪いと考えるのではなく、「社会的自立」という目標を達成することが大事であると通知しています。そのため国や自治体、学校、民間企業、NPO法人の不登校支援を積極的に活用することが大事です。

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